「2000 年 7 月 JUS 大阪勉強会」議事録

第一部 「UNIX 上で電子辞書を活用しよう」 高林哲

UNIX 使いほど電子辞書を使うべき

フリーの電子辞書(国内)

フリーの電子辞書(海外)

辞書の種類

EPWING と電子ブックの両方がある場合は EPWING を買っておくとよい

市販の電子辞書

UNIXから辞書を使うためのソフトウェア

UNIX+Emacs では Lookup がおすすめ。ドキュメントを書いているときに、そのまますぐ使えるから

その他の UNIX から辞書を使うためのソフトウェア

動作画面の紹介

電子辞書についての情報源

動作デモ

英語を読んでる... 何だこの単語は?... カーソルを合わせる... ほら引けた!!
ん? ○○の意味がわからん... そこから国語辞典を引いて見る... ほらわかった。

文書書きつつ、辞書を引きつつ... 効率が雲泥の差!!!!

第二部 「辞書の自由」 かずひこ

本職はデザイン。特にタイポグラフィ、つまりことばをかたちにするのが職業。だから辞書にも興味を持った。

FreePWING 版マイペディア

PC Success にマイペディアの体験版が添付された (ほぼフルバージョン)。 500 円で買える電子辞書として話題になる。 mypaedia-fpw (FreePWING に変換するスクリプト) も大変な話題に。 各氏の努力で UNIX 上でも利用できるようになった。 付属検索ソフトが今ひとつだったので、(変換しなくても使える) Windows ユーザで mypaedia-fpw に変換して利用している人もいる。

独自規格辞書の問題点

プラットフォームが制限される。GUI が絶対よいわけではない。たとえば視覚障害者の人は、コマンドラインから引けて、その結果を音声合成ソフトで出力する、そんな使い方が必要だろう。
辞書ごとに検索ソフトが必要。いろんな辞書を机の上に開いておくのと同じじゃないか。だめだよね。

共通規格の利点

ひとつのソフトウェアだけで、いろんな辞書を扱える。串刺し検索ができる。辞書の製作者にとっても、生成や検索ソフトの開発費用が削減できる。

日本語電子出版検索データ構造

上記のようなことが、JIS X 4081 付属の解説ですでに指摘されているにもかかわらず、まだ独自規格が出版されているのが実情。

EPWING (JIS X 4081 も) の問題点

日本語に関する扱いとしてはよくできているが、その他については不十分。 規格が公開されていないしコンソーシアムが閉鎖的(会員は法人のみで、すでに参加している会社2社以上の推薦が必要)。 出版業界から見ると、表示制御の拡張性が乏しいのが欠点。

電子辞書の未来

規格、コンテンツ、ソフトウェアの連携が重要。例えば WWW と同じことが言える。

新しい電子辞書規格

Fight for Liberty!

辞書の自由

紙の辞典はどうしても発行した時点で死んだものになる。それをユーザがどんどん変更する、つまり命を吹き込むことができればいいな。

第三部 「パネルディスカッション」 太田純 (司会)、笠原基之、高林哲、かずひこ

太田
雑談しましょう。正しい目玉焼きの食べ方にちなんで、正しい辞書の選び方ということで。みなさんの力を集めるための動機付けにしたいと思います。というわけで、参加者全員がパネリストというつもりでおります。みなさんどんどん意見を出してくれると幸いです。
では、自己紹介していただきます。
かずひこ
私の転機は FreePWING。それまでは Lookup なんかのバグだし程度。FreePWING のリリースで、それをどんどんみんなで分かち合おうじゃないかということになった。今後は、共通規格の提案とかそういう方面でがんばっていきたい。
笠原
肩書きはプログラマなんですが、あまり会社でプログラムを書いたことがないです。とんでもないですね。これまでには、FreePWING、NDTPD、BookView、EB Library なんかを作りました。会社と関係ない作業ですね。
高林
私は学生なんですが、辞書とは関係ない研究です。でも辞書が好きで、開発者の人に注文つけてるだけです。
太田
日本語とか言葉に関することが好きで、エディタの日本語化とかかな漢変換の比較なんかをしました。最近は、独自規格の辞書を解析して、コマンドラインから使えるものを開発したり、辞書を小さくするものを作ったりしました。新しいものを作るより、今あるものを解析するようなことをしていきたいと考えてます。
太田
辞書の環境は整ってきた。でも UNIX では使えない辞書はたくさんある。オープンラボの WWW ページにも使えない辞書一覧がある。実は皆さん、いろいろ使いたいんじゃないかな?
笠原
Freeware を作ってみんなが辞書を使えるようになったらいいな。で、使えない辞書を報告してくれるのもうれしい。自分で作ったソフトは、使えるというのがわかった辞書は、ユーザから情報をもらうと公開するようにしています。
太田
文句をいってくれませんか>高林さん
高林
今はあんまり文句はなくて、充実してるなと思う。最近、電子辞書道を考えてます。面倒なことが簡単になったというのはハッピー。どんどん引きまくることが電子辞書だ。プログラミング言語にたとえると、紙の辞書はコンパイラ。電子辞書は対話型。書いてるそばからどんどん実行できる。試行錯誤が楽だよね。ストレスがないのが電子辞書のいいところで、それが電子辞書道
太田
かずひこさん、高尚な発表でしたが
かずひこ
いえ、マイペディアは 500 円だったので「とりあえず行っとけ」というだけです。ランダムハウスの 15000 円はつらかったけれど、とりあえず大きな風呂敷を広げといて、皆さんにたたんでもらえると嬉しい。
太田
みんな結構いいかげんな動機ですよね。私自身もそんな感じです。
森下(お代官様)
私は NeXT 使ってますが、これははじめから digital Webster 辞書ついてます。いい英英辞書がないというのが悩みです。Webster のせいで NeXT が手放せない。これが困る。これに代わる英英辞書はないかな。
高林
僕も (いい英英辞書が) ほしい。Free のものもあるのだが古かったりあまりよくなかったり。最近 The Newbury House Dictionary が Lookup で使えるようになったらしい。でも、もっと有名な辞書が使いたい。
太田
Oxford は初めて買いました。Win31 で動いてるやつです。これをUNIXに持っていきたいと考えましたが、中身がわからない。時間ができれば解析したい。Windows だと Bookshelf (American Heritage) とかいろいろある。Oxford と比べると小さい。
太田
有志の方々のフリーの辞書はどれくらい信用してます? 私はあまり信用してないんですが。たとえば英辞郎ですが、それなりの品質はあると思うんですが、pall-mall が「ポールモール」としか書いてない。
GENE は学習用辞書として使える?
高林
学習用としては使えませんが、ちょっとした意味を引くには便利です。
森下
英語を読むときって前後でどういう風に使われているのかが重要。用例が欲しい。
aaaa
辞書についての知識が広まらないと、使う人も増えないのではないか。オープンラボをみんなが見れば使おうかなという人が増えると思うんですが。
太田
今日の勉強会がそのひとつのきっかけになったらうれしいですが。みなさんどういうときに辞書引きたいですか。
bbbb
略語というか頭文字だけとってきたようなものが氾濫してて、業界によって違う。予想外の解釈があって困る。あらかじめ同じ略語に対する解釈が列記されたような辞書がないか。これは最新の情報がいるので、紙じゃ無理ですね。だから HTML でそんな情報を集めてる。今、数千語。あほなことしてますね。(笑)
太田
ぜひ公開して欲しいですね。
bbbb
後日公開します。
太田
業界用語とかは怪しい用語が多くて、こんなのは集められるといい。そんな種類の辞書をいろんなものを集めてきて、それらを串刺し検索できたら面白いかもしれない。
aaaa
gnutella とかつかってやってるという話も聞いたことがある。
bbbb
形式を指定してもらえると、やりやすいか。
笠原
力が余ってなくて... Bookview は大幅な改良は終了したが、まだ三つ (EB Library, NDTPD, FreePWING) ある。若い力が欲しい。
太田
何らかの自分なりの視点があれば、情報の提供は可能。edict openlab などにコンタクトして欲しい。
太田
DOS/V マガジンの記事を持ってきた。Windows で使える辞書が載ってる。Windows の上では、どの百科事典を選ぼうかという話がある。たくさんあるけど、この辺をどなたか使えるようにしてくれる人はいないかな。たとえば世界大百科 (9 万) でアホウドリを引くと、マイペディアよりよい。スーパーニッポニカ (日本大百科全書 小学館 13 万) ならさらに文書の量が多い。フォントもきれい。エンカルタ (マイクロソフト) ではどうか。せいぜい 3 万。でも検索方法は充実している。内容もマイペディアより充実している。そういう意味で、UNIX の百科事典は貧弱だ。
かずひこ
マイペディアが話題になったおかげで、あっちこっちで使ってもらえるようになって、いろいろユーザから声が聞こえるようになった。その結果「ないよりましやろ」。引けることが大事。小学館は良くも悪くも本に近づけようとしすぎている。ユーザが電子辞書として利用する際の行動をよく考えてないと思う。独自規格にこだわるのが見た目のためなら、本末転倒。電子辞書には電子辞書の特徴がある。
齊藤
大学で、学生一人一人に百科事典を買わせるわけにはいかない。紙の 3倍でネットワーク利用が可能、とかいうのがいい。そういうことも考えて欲しい。
笠原
一部の辞書ではそういう使い方もできましたね。でも (出版社は) ネットワークというものがよくわかっていないので、へんなライセンス形態になっている。ユーザが良心側に振って使わざるを得ない。たとえば同時アクセス数という概念もあいまい。まだ難しいかもしれない。
太田
出版社が理解しないといけない。安くならないし。でも安くない?
齊藤
8 万円の百科事典を 20 人に買わせられない。
太田
ライセンスや料金について、何らかの働きかけを出版社にしないといけないんでしょうね。誰か学研とか小学館さんに、UNIX で使えるようにするとか、ライセンスの関係とか、話してもらえないですかね。
竹内
優秀な学生を入社させる
吉岡
出版の立場としての意見です。出版社として一番恐れているのは、コマンド一発で内容をコピーできること。独自フォーマットも、本を作る立場では必要。きちんと表示させないといけない義務がある。だから仕方がないと思う。
竹内
実際に使ってフィードバックしている人がいないんじゃないか。それが問題だと思う。ライセンスの話もそうだし。
太田
ユーザからのフィードバックがあったのではないかと想像できるものもある。フィードバックができる環境もある。受付窓口もちゃんと対応してくれた。
太田
とっちらかってしまって申し訳ありませんでしたが、時間も来たようですのでこの辺で。

電子辞書オープンラボ
かずひこ